紫波五郎沼歴史研究会設立趣意書
                                        

紫波町は、古くは律令政府による東北開発の拠点として造営された志波城や徳丹城の南方に位置し、本県の中でも比較的早くから中央文化の影響を受けた地域である。そこには、長い歴史や風土に育まれてきた有形・無形の歴史文化が日常の暮らしの中で大切に守り、受け継がれ、地域の個性を醸し出している。
一方、近年の人口減少や少子高齢化による担い手の減少などの社会情勢の変化に伴い、各地域が地縁・血縁・団体等が中心となって守り、受け継いできた歴史文化の中には消滅・散逸の危機に直面しているものも見られる。
平成23年(2011)6月、「平泉の文化遺産」が世界遺産一覧表に記載されたことを契機に、多様な主体によって歴史文化を活用した地域振興、観光振興等の取組が行われている。しかし、文化財が地域の資源として認知はされているもの、日常との接点や暮らしと重ね合わせて理解されることは少なく、地域資源としての魅力が十分に活かされず、地域振興・観光振興等に結びついていないとも指摘されている。
今日、有形・無形を問わず、歴史的な価値を有する文化的な所産を、広い意味での歴史文化遺産としてとらえ、これを次世代に引き継ぎ、地域の資源として観光振興や魅力的な居住環境の形成などの地域づくりに総合的に活かしていくための取組がより一層に求められている。
歴史文化とは、地域の成り立ちを明らかにしてくれる建造物や美術工芸品などの有形文化財だけではなく、人々が日常の生活や生業を通じて創出、継承されてきた生活文化・技術などの無形の文化的所産を含むものである。先人から引き継いだこれらの地域の歴史文化を保存・活用し、次世代へと伝えていくとともに、地域の歴史文化を核としてまちづくりに活かすことが大きな地域課題になっている。
この二つの課題を克服するには、一人ひとりが紫波町の歴史文化を育む主体であることを認識し、自らが暮らす地域の歴史文化を理解し、その価値を地域全体で共有し、新たな視点や魅力を加えてその価値を着実かつ継続的に国内外に発信し、行動につなげていくことが有効な手法と考えられる。
これらの状況を踏まえ、紫波町の歴史文化の調査・研究を連携・協働によって推進し、その成果を国内外に発信することにより、歴史文化を活かしたまちづくりの推進に寄与することを目的として、ここに紫波五郎沼歴史研究会を設立する。

平成29年11月1日