⑨ 志和通総鎮守・志和八幡宮
志和八幡宮の社殿（本殿・拝殿）
神社の沿革
志和八幡宮は、誉田別尊（応神天皇）を祭神とする。社伝では貞観４年（862）に山城国男山八幡宮（＝石清水八幡宮）を勧請したとするが定かではなく、東北開拓以前に進出し八幡神を崇敬した豪族や八幡神を信奉した清原氏の関与も想定される。近世初期に盛岡藩主南部利直から社領の寄進を受けている。寛文４年（1664）に盛岡藩は８万石の盛岡藩と２万石の八戸藩に分割され、志和地区の上平沢・稲藤・土舘・片寄村の４か村が八戸藩領に編入された。志和八幡宮は八戸藩志和通の総鎮守の地位にあった。
八戸藩紫波代官所(御仮屋)跡
八戸藩と志和通 志和地区は八戸藩初代藩主南部直房の夫人（霊松院）の母（耕雲院）の故地でもあった。耕雲院は旧高水寺斯波氏家臣の朝倉氏の娘で、志和地区には霊松院や八戸藩２代藩主直政の弟直常の知行地があった。直常の病死後、その知行地である志和に追善供養のため「准胝観音菩薩坐像」を本尊とする御堂（沢口観音堂）が建立された。八戸藩志和通の統治の役所である志和代官所（御仮屋）は、寛文５年（1665）に志和八幡宮の東方に置かれた。代官所の東方に造り酒屋を営む近江商人村井権兵衛の酒造蔵があった
紫波八幡宮五元日祭裸参り
志和八幡宮の五元日祭 源義家が前九年合戦の戦勝を祝したとする故事にちなんだ五元日の祭典は、正月５日の未明に社前に大篝火を焚き上げ、地域の伝統行事として現代に継承されている。300年以上の歴史があるとするこの祭典では、一年の無病息災を祈願して裸参りが奉納される。かつて南部杜氏の醸造祈願であった裸参りは中断していたが、昭和50年に志和八幡宮氏子青年会によって復活され、現代に継承されている。五元日祭や裸参りは、旧志和村の伝統文化や南部杜氏発祥の地である酒造文化を後世に伝える貴重な祭事といえる。
志和八幡宮で開催される「志和蚤の市」
神社の現代的な活用 志和八幡宮の鳥居は、主柱を4本ので支えるが特徴である。境内にはユニークなが待ち構えている。まるでサングラスをつけたような狛犬である。志和八幡宮の境内では年に２回、地元有志が主催する「志和の市」が開催される。寺社は古くから文化サロンとして、地域コミュニティの核として機能してきた。寺社には信仰の場所であるという本来の意義を損なうことなく、地域活性の核として現代的な役割が期待される。蚤の市は地域の核である神社と地域住民を結びつける取組として高く評価される。